toggle
2018-10-26

血液サラサラ、抗ウイルス対策、デトックス効果、老化予防に効果あり。日本の伝統発酵食「納豆」を食べよう!

昔から、体に良いと言われる「納豆」。日本ならではの食品の代表ともいえる納豆は、大豆を納豆菌で発酵させたものです。以前から体によいとは言われていましたが、近年の発酵ブームを受けて、改めて健康効果が見直されています。和洋中を問わず、さまざまな料理に利用できる点も注目すべき点。毎日食べることで健康が増進されるという研究結果が多数発表されていますから、ぜひ、食べ続けたいものです。今回は、納豆について、少し踏み込んでお話してきます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

納豆の起源には諸説あり、その中でも最も古いものは、大豆の栽培が始まった弥生時代までさかのぼります。納豆の原料である大豆は、生で食べられないために茹でて食べられていました。その大豆が、床に敷かれたワラの上に落ち、温まって自然発酵したのが最初の納豆ではないかと言われています。納豆について書かれた書物は、平安時代のものが最古ですが、当時の納豆は今、私たちが食べている糸引き納豆とは違い、大豆を麹菌で発酵させたあと、乾燥・熟成させたものだったようです。

今のような糸を引く納豆が庶民の口に入るようになったのは江戸時代ではないかと推測されています。ただ、当時は、ご飯にかけるのではなく、味噌汁に納豆を入れた納豆汁として食べていました。こうして歴史をみていくと、納豆は日本独自のもののように思えますが、中国や東南アジアにも糸を引き、独特の匂いのする納豆は食べられています。とはいえ、納豆だけをそのまま食べるというスタイルは日本だけのようです。他の国では、油で揚げるか、野菜や魚と一緒に炒めて食べるのが一般的です。

納豆ならではのネバネバと匂いは「納豆菌」がつくり出しています。納豆菌は枯草菌(こそうきん)の一種で、土壌や植物の中に存在し、空気中にも常在している菌の一つです。日本産の稲のワラ1本には、約一千万個の納豆菌が「芽胞(がほう)」という形で付着しています。芽胞というのは、菌が休眠しているような状態で、その場所の環境が菌に適していない場合に形成される特殊な細胞構造のことです。温度や湿度が整い、増殖に適した環境になると発芽して菌本来の働きを始めます。この特性から、安定性のある強い菌として知られています。

真空や冷凍、100℃の煮沸でも死滅しませんし、酸やアルカリに対しても耐性を持ちます。人間の致死量の何千倍もの放射能を浴びても生き残れるとか、栄養なしでも100万年生きられるなど、推測に過ぎない意見もありますが、それだけ強い菌というわけです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

納豆の種類は、使用する大豆の大きさや形状で分類されます。

「大粒納豆」は、粘りが少なめでかみ応えがあります。そのため、ご飯にかけるよりはそのままおかずとして食べられることが多いようです。

「小粒納豆」は、水戸で小粒大豆の生産が増えたことで使われることが多くなりました。粘りが強く、ごはんにかけて食べるのが最もおいしいとされています。

納豆巻きなどにも使われる「ひきわり納豆」は、大豆を砕いてから発酵させます。大豆の皮がないため、発酵スピードが速く、大粒納豆や小粒納豆とは食感も風味も違います。東北地方ではひきわり納豆がよく食べられています。

また、納豆に別の食品を加えた伝統食もあります。

山形県の米沢地方で昔からつくられている「五斗納豆」は、ひき割り納豆に米麹と塩を加え、発酵・熟成させたものです。刻みショウガや七味唐辛子、ニンニクなどを薬味として入れることが多いようです。

茨城県水戸市の郷土料理「しょぼろ納豆」は、納豆に塩漬けした切干大根を刻んで入れ、醤油や調味料で味を調えたものです。「そぼろ納豆」と呼ばれることもあります。酒のつまみやお茶漬けの具として食べられることもあるようです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

では、いよいよ納豆の健康効果についてお伝えしていきましょう。

原料の大豆は、栄養素のうち35%がたんぱく質。「畑の肉」と呼ばれるほど高い栄養価を誇ります。私たちの体は、筋肉も骨も内臓も、細胞レベルからたんぱく質でつくられています。たんぱく質を構成するのは「アミノ酸」ですが、アミノ酸のうち、体内ではつくることができず、食品から摂取しなければならないものがあります。これらは「必須アミノ酸」と呼ばれ、8種類が確認されています。大豆には必須アミノ酸が豊富に含まれているため、たんぱく質のなかでも非常に良質で、私たちの健康を支える大切な食材と言えるのです。

たとえば、100g当たりのアミノ酸含有量を大豆と豚肉で比較してみると、成長ホルモンに関与する「イソロイシン」は大豆で1800mg、対する豚肉は990mg、筋肉をつくる重要な役割をする「ロイシン」は、大豆で2900㎎、豚肉では1700㎎、うつ病を予防すると言われる「フェニルアラニン」は大豆で3300㎎、豚肉は1500㎎と、いずれも大豆のほうが優れていることがわかります。

体にとってなくてはならい必須アミノ酸をたっぷり含む大豆を「発酵」させたものが納豆です。発酵とは、目に見えない小さな微生物の働きのこと。地球上にはさまざまな場所に微生物が生きており、その微生物が食品の成分を分解したり、合成したりします。こうしてできたものが、一般的に「発酵食」と呼ばれます。

発酵に関わることのできる微生物は、総称して「発酵菌」と呼ばれます。なかでも良く知られているのが、酵母、細菌、カビです。納豆の発酵菌は前述した通り、「納豆菌」と呼ばれるものです。

納豆菌は、温度や湿度が納豆菌にとって心地よい状態であれば、たった一つの菌が15時間後には10憶個に成長すると言われています。それだけのパワーを持つ納豆菌は、多くの酵素をつくり出すことでも知られています。大豆のたんぱく質や糖、脂質を分解し、納豆独特の匂いや、ネバネバを生むのも、納豆菌がつくる酵素の力です。

納豆菌がつくりだす酵素のなかでも、特に注目すべきは「ナットウキナーゼ」という酵素です。この酵素は、血管内にできた血栓のもととなる「フィブリン」というたんぱく質を分解する働きがあることで知られています。食品の中で、血栓を直接溶かす働きがあるのは納豆だけ。血液をサラサラにして血圧を下げ、動脈硬化や心筋梗塞を防ぐ効果が期待できるのです。

また、納豆のネバネバをつくり出している成分は「ポリグルタミン酸」と呼ばれます。この成分もとても優秀で、胃壁を守り、腸管の老廃物を排出する手助けをしてくれます。

納豆の健康効果はまだまだあります。

「イソフラボン」は免疫を上げ、ホルモンバランスの乱れを整え、美肌効果を発揮しますし、「大豆レシチン」は、記憶や判断などの情報伝達物質に変化し、脳機能を高めます。老化による物忘れや学習能力の低下を抑制するとも言われています。

大豆が納豆菌で発酵する際に発生する「ジピコリン酸」は、強い抗菌作用、抗ウイルス作用を持っていて、体の免疫力を高めます。病原性大腸菌O-157への抗菌効果も認められているほどです。

大豆に含まれるアミノ酸の一つ「アルギニン」は、傷ついた肝臓の細胞を修復し機能を回復させる働きがあります。また、納豆菌は腸内で骨を形成するビタミンKをつくり、骨粗鬆症を予防します。

さらに、納豆菌のすごいところは、胃を通るときには、芽胞をつくり休眠状態になり、胃酸に溶かされず生き延びる点です。小腸から大腸に入って、ようやく発芽し、腸の中で善玉菌が増えるのを助けてくれるのです。

こうした健康効果が認められている納豆ですが、多くの種類からどれを選んだらよいのかわからないという声も聞かれます。豆の大きさだけでなく、包装の違い、たれの味など、その種類は驚くほど多彩です。納豆自体の健康作用としては、おそらくどれも大差ないと思います。選ぶ際のポイントとして着目して欲しいのは大豆の種類です。農薬のことを考えると、国産の大豆であることは一つポイントになるでしょう。アメリカ産の大豆は94%が遺伝子組み換えの大豆です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

次のポイントは包装です。昔ながらのワラに包まれたまま発酵させた納豆は、ワラ独特の香りがして食欲をそそります。同時に、本来の納豆臭さをワラが吸収してくれるので、朝食べるには適しているでしょう。注意点としては、ワラについている菌で二次発酵が進みますから、賞味期限内に必ず食べるようにしてください。

最後はタレですが、梅、ネギ、卵など、各メーカーが工夫したたれを添付して競い合っています。しかし、こちらに関しては健康をより重視するのであれば、使用しないほうが適切かもしれません。添付されているタレは、いわゆる調味液ですから、天然のものではなく、塩分や糖分を余計に摂取することになります。本当に美味しい納豆であれば、醤油を1~2滴かけただけで十分美味しく味わえるはずです。

また、どうせ食べるなら、「納豆」の旨味と栄養をパワーアップさせる食べ方にチャレンジしてみましょう。納豆をかき混ぜるのは何回がよいのか。さまざまな意見が言われていますが、これは好みの問題です。実際試してみると、混ぜれば混ぜるほど滑らかになり、美味しく感じる人が多いかもしれません。

混ぜる前には薬味や調味料はいれないほうが、粘りが出ます。また、薬味をいれる場合は食べる直前にしましょう。薬味から出る水分が、旨味を薄めてしまいます。

卵を混ぜて食べるのも美味しいですが、ここでひとつ注意があります。納豆に卵を入れる場合は黄身の部分だけにしましょう。卵白には「アビシン」というたんぱく質が含まれているのですが、納豆に含まれるビタミンB群の一つ「ビオチン」が結合すると、体に吸収されないまま排泄されてしまいます。ビタミンB群は疲労回復やストレス解消に効果を発揮する大切な栄養素ですから、納豆の栄養価を十分に取り入れるためにも、卵白とは混ぜないほうがよいのです。

また、納豆を食べるのは夕飯がおすすめです。ナットウキナーゼは、血液をサラサラにして血管の病気を予防する大切な働きをしてくれますが、血管が汚れやすいのは寝ている間。その間にナットウキナーゼの成分が体内にあることが大事です。

ナットウキナーゼの効果は食後少ししてから、10~12時間くらい継続すると言われます。心筋梗塞が起こりやすいのは朝4~5時、狭心症が起こりやすいのは朝6~8時ですから、夜8時ごろまでに納豆を食べると、これらの病気の発症リスクを抑えられるのです。

今回お伝えした納豆の健康効果は、実際に論文で発表されている効果効能をまとめたものです。科学的に健康効果が実証されているのですから、食べて損はありません。インフルエンザが流行するこれからの季節、抵抗力を高めるためにも「夕飯に納豆」を続けてみてはいかがでしょう。

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です