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2018-10-31

自分に合った乳酸菌を食べて腸内環境を改善しよう!

「生きたまま腸に届く」というフレーズに聞き覚えのある人は多いでしょう。ヨーグルトをはじめとする、乳酸菌の含まれる商品の宣伝文句のひとつです。

それにしても、「生きたまま腸に届く」とはどういうことでしょうか?

通常、ヨーグルトなどに含まれる乳酸菌は、食品のなかで生きて活動し、発酵を促しています。自家製ヨーグルトをつくったことのある人ならわかると思いますが、乳酸菌が働くことで発酵が進み、水分が減り、固形に近づいていきます。食べずに放置しておけば、発酵がさらに進み、やがて空気中の雑菌が混ざり、腐敗していきます。

それなら、私たちが乳酸菌を含む食品を食べると、乳酸菌は生きたまま体のなかで活動を続けるのかというと、必ずしもそうではありません。実はほとんどの乳酸菌は体内で死滅してしまいます。体内に入った食べ物は、消化の過程で胃を通ることになりますが、胃酸は大変強力な酸性であり、ほとんどの菌は胃酸によって死滅させられてしまうのです。ですから、胃という難関を通り抜けて、生きたまま腸までたどりつける菌というのは、耐酸性が高い菌でなければなりませんが、酸に強い菌はそれほど多くはないのです。

そこで、各食品メーカーは必死になって、胃酸に負けない強い菌を探しはじめたのです。

ここで、そもそも「乳酸菌」とはどういうものかを説明しておきましょう。

乳酸菌は「糖質から乳酸をつくりだす細菌の総称」です。1種類の菌を指すものではなく、発酵によって糖類から乳酸を産生し、悪臭の原因になるような腐敗物質をつくらないものが一般に乳酸菌と呼ばれています。現在確認されているだけで、約200種類もの乳酸菌が存在し、植物由来のものと動物性のものに大きく分けることができます。

私たちの体内にも乳酸菌は棲みついています。その多くが腸内にいて、「善玉菌」として腸内の環境と整える役割をしています。腸内細菌を大きく分けると、人にとって有益な「善玉菌」、悪い影響を与える「悪玉菌」、善玉菌と悪玉菌のうち、優勢な側になびく「日和見菌」がいるのですが、乳酸菌を代表とする善玉菌は、腸内でビタミンを生成したり、消化管の免疫力を高めたりする働きをしています。

腸内細菌の割合が、乳酸菌をはじめとする善玉菌優位の状態であると、食べたものの栄養はしっかり吸収され、老廃物は尿や便として排泄されます。しかし、体調が悪いとか、ストレスがたまっている、食事のバランスが悪い、生活サイクルが乱れているときには悪玉菌の比率が高くなってしまいがちです。すると、大腸で食べかすが腐敗し、毒素が発生します。

これらの毒素は、腸管を傷つけて下痢や便秘を引き起こします。また、毒素の成分は、血液を通して全身に運ばれてしまうために、さまざまな病気の原因にもなってしまうのです。とくに、便秘がちな女性で、膀胱炎や膣炎になりやすい人は、腸内細菌のバランスが悪い可能性が高いので注意してください。

つまり、腸内に善玉菌が増えれば、腸内環境が整うということになります。

さて、ここで「生きて腸まで届く」が問題になってきます。いくら乳酸菌の含まれた食べ物を口にしても、菌が胃で死滅させられてしまったら意味がない、そう思えますよね? そう考えたからこそ、胃酸に勝つ乳酸菌を各メーカーが必死に探しているのです。

ところが、最近の研究で、乳酸菌が胃酸で死滅させられて腸に届いたとしても、乳酸菌の死骸が腸管に刺激を与えて、生きている菌と同様の作用をすることがわかってきたのです。すべてが解明されたわけではありませんが、現状では、「生きたまま」でなくても、乳酸菌の含まれた食べ物は、腸内環境を整える一助になると考えて良いようです。

ただし、注意して欲しいのは、乳酸菌の含まれたものを大量に食べたからといって、いきなり腸内環境が激変するわけではありません。外部からは取り込んだ乳酸菌がそのまま腸内に棲みつくわけではなく、現在、腸内にいる善玉菌に働きかけて、善玉菌が増えるように働きかけるだけです。ですから、乳酸菌は毎日摂取して、少しずつ腸内環境を整えていく必要があるのです。

また、乳酸菌は種類によって、体に与える影響が違います。各メーカーが研究を重ね、それぞれ効果のある菌を見つけていて、その健康効果は化学的に証明されているものもたくさんあります。数年前にインフルエンザ予防の効果をうたった乳酸菌飲料が発売され、爆発的な人気となりました。

また、2018年の3月には大手食品メーカーが、「ビフィズス菌A1」という乳酸菌に、「軽度認知障害が疑われる人の認知機能を改善する作用がある」ことを確認したと発表しました。今後も、新たな効果をうたう商品が登場してくるはずです。もちろん、薬ではありませんから、誰もが必ず効果を感じられるわけではありません。人によって菌との相性もありますから、いくつか試してみて「便通が良くなった」「肌がきれいになった」など、効果を感じられたら、その商品を続けて摂取していくのが賢い方法でしょう。

以下は、多くの論文から、主な乳酸菌の健康効果がうたわれているものを抜粋したものです。乳酸菌の含まれた商品のパッケージに、乳酸菌の名称が表示されているものも数多くありますから、購入の際の指針にしてもらえればと思います。健康効果については、あくまでも研究の成果であって、その乳酸菌を含む製品を摂取すれば必ず得られるという効果や効能ではありません。また、効果を実感するには、適量を毎日続けて摂取する必要があることはお忘れなく。

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〈腸を整える作用の強い乳酸菌〉

▼ビフィズス菌BB536菌

日本で初めてヨーグルトに使われたビフィズス菌。強い殺菌作用があり、悪玉菌の繁殖を抑える。特定保健用食品の関与成分にもなっており、世界各国に輸出されている。O-157の感染を防ぐ作用がある。

▼乳酸菌LGG株

研究論文や臨床研究が1300以上もある、研究の盛んな乳酸菌。初めて特定保健用食品の関与成分になった乳酸菌として知られている。便通の改善のほか、アトピー性皮膚炎などのアレルギー予防や、皮膚の毛穴改善など美肌効果もある。

▼ビフィズス菌Bifix(GCL2505株)

マウスによる実験で内臓脂肪の蓄積抑制、糖代謝の改善が見られた。生きて腸まで届き、腸でスピーディに増殖することから、他の乳酸菌に比べて整腸効果が早く出る。機能性表示食品の関与成分。

▼ビフィズス菌BE80

酸に強く、腸まで生きて届く。女性と高齢者において、便の腸管通過時間を短縮することがわかっており、便秘解消や腸内にたまったガスの解消に効果がある。

▼LB81乳酸菌

ブルガリア菌2038株とサーモフィラス菌1131株を併せてLB81菌と呼んでいる。トクホの関与成分にもなっている。悪玉菌の数を減らすだけでなく、悪玉菌が出す有害物質の量を減らす効果もある。また、腸管内の「抗菌ペプチド」を増やし、腸管バリアの機能を高めることがわかってきた。

▼クレモリス菌FC株

カスピ海ヨーグルトの中心となっている菌。高い整腸作用による腸内環境と排便状況の改善が認められている。アトピー花粉症などのアレルギー症状の改善、インフルエンザなどのウイルス性疾患の予防、中性脂肪の低減血糖値の上昇抑制による糖尿病の予防なども期待できる。

▼ビフィズス菌BB-12

世界的に使われている乳酸菌。学術論文も多い。生きたまま腸まで届き、腸内環境を整え、腸の蠕動運動を活発化させる。胃のむかつき、免疫力向上、アレルギー症状の緩和なども期待できる。

▼NY1301株

特定保健用食品の関与成分。胃酸や胆汁酸に強く、高い確率で生きたまま腸に届き、腸で増えやすいことが確認されている。善玉菌と合わせて37℃の環境で培養したところ、善玉菌が約20倍に増加した研究結果がある。

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〈免疫力を高める乳酸菌〉

▼R-1乳酸菌

ブルガリア菌の一種。NK細胞(ナチュラルキラー細胞)を活性化させ、免疫力を向上させる。高齢者や小中学生を対象にした実験で、インフルエンザや風邪の感染率の低下が認められている。

▼ラブレ菌

京漬物「すぐき」から発見された植物由来の乳酸菌。小・中学生を対象とした大規模実験で、インフルエンザの感染率の低下が認められている。便通の改善はもちろん、肩こり、腰痛、手足の冷えの改善効果もある。

▼ビフィズス菌SP株(SBT2928株)

大腸に定着し腸内環境改善する。ウイルスに感染した細胞やガン細胞を攻撃するNK細胞の活性化、病原性大腸菌O-157の予防にも効果が期待できる。

▼ST9618株

がん細胞やウイルス感染細胞を見つけ、攻撃をするNK細胞を活性化し、免疫力を高める。風邪症候群の予防と症状の低減が確認されている。

▼シールド乳酸菌

NK細胞を活性化し免疫力を高める。マウスによる実験で、肺でのインフルエンザウイルスの増力が抑制され、症状が軽減された。

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〈がん予防・アンチエイジングに効果のある乳酸菌〉

▼L.カゼイ YIT 9029(乳酸菌Lシロタ株)

特定保健用食品の関与成分にもなっている乳酸菌。大腸がん、乳がん、膀胱がんの予防、腸内環境の改善、NK細胞の活性化に加え、有害物質を菌体に吸着して排泄する効果も期待できる。

▼プラズマ乳酸菌

マウスによる実験で、加齢による毛艶の劣化、筋肉量の減少などが抑制できると判明。また、感染症が起きたときにだけ活性化する「プラズマサイトイド樹状細胞」を、健康な状態でも活性化させる唯一の乳酸菌。風邪、インフルエンザ、ロタウイルスなどの感染を予防する。

▼ビフィズス菌LKM512

酸に強く、空腹時でも胃酸によるダメージを受けず腸に届く。腸内を酸性に傾け、善玉菌を増やす助けをするとともに、大腸がんやアンチエイジングに効果のある「ポリアミン」という物質をつくる。

▼乳酸菌PA-3株

細胞の新陳代謝に使われる体内のプリン体は、過剰摂取すると血清尿酸値の上昇、高尿酸血症や痛風発症リスクになる。乳酸菌PA-3株は、菌が増殖するときにプリン体を取り込むことがわかっており、痛風患者の血清尿酸値を改善することが確認されている。

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〈抗アレルギー効果のある乳酸菌〉

▼リフレクト乳酸菌(T-21)

一日あたり数千億個の菌を摂取することが可能な乳酸菌で、一般的な乳酸菌の半分の期間で効果を実感できる。花粉症やハウスダストなどが原因の通年性鼻炎であれば、3~4週間、花粉症であれば4週間食べ続けるのがおすすめ。

▼L-92乳酸菌

免疫細胞の働きを正しく導き、アレルギー症状の原因となる物質の産出を抑制する。小児アトピー性皮膚炎、成人アトピー性皮膚炎でも、検証実験が行われ、炎症の強さと面積、かゆみに対して有効性を示す結果が出ている。マウスによる実験ではインフルエンザの予防効果も認められている。

▼KW乳酸菌(KW3100株)

免疫細胞のバランスをとり、アレルギー症状を改善する。マウスによる実験では、くしゃみの回数、鼻をひっかく回数が軽減することがわかっている。

▼L-55乳酸菌

生きたまま腸まで届き、腸管上皮細胞での定着率が高い。マウスによる実験で、花粉症やアトピー性皮膚炎の症状が緩和された。

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〈内臓脂肪を減らす乳酸菌〉

▼ガセリ菌SP株

内蔵脂肪を低減する効果がある。マウスによる実験で、インフルエンザ予防と、インフルエンザの症状を軽減することが確認されている。腸管への定着性が非常に高い点も特徴。

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〈ピロリ菌を撃退する乳酸菌〉

▼乳酸菌LG21株

耐酸性が強く、酸性の環境でも成長し、胃の細胞に定着しやすい。ピロリ菌の増殖を阻害し、菌数を1/10に抑制するというデータもある。胃炎や胃潰瘍などの原因が見つからないのに胃もたれや胃の痛みが続く人の症状を軽くする。

▼ビフィズス菌B.ビフィダムY株

胃で働くビフィズス菌。胃の機能を回復、ピロリ菌抑制作用に加え、ストレスを軽減する作用がある。ストレスによって上昇する、唾液中のコルチゾール濃度の低下が確認されている。

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〈ストレスを軽減する乳酸菌〉

▼ガセリ菌C-23株(プレミアガセリ菌CP2305株)

ストレスが原因の腹痛の改善や、ストレスマーカーである唾液中のコルチゾールの分泌が抑制させることが確認されている。睡眠時の脳波調査では、入眠までの時間と、睡眠中の深い眠りの割合が改善することがわかっている。また、自律神経と関わる脳の部位で血流が改善され、副交感神経の活動が増加することも確認されている。

▼L.ガセリ乳酸菌(OLL2809株)

血中コルチコステロンの増加をゆるやかにして、脾臓のNK細胞の活性が低下するのを抑えてストレスを軽減する。また、激しい運動による免疫低下抑制、アレルギー症状軽減、子宮内膜症の進行を抑制する効果もある。

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