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食習慣
2018-10-31 | 食習慣

自分に合った乳酸菌を食べて腸内環境を改善しよう!

「生きたまま腸に届く」というフレーズに聞き覚えのある人は多いでしょう。ヨーグルトをはじめとする、乳酸菌の含まれる商品の宣伝文句のひとつです。

それにしても、「生きたまま腸に届く」とはどういうことでしょうか?

通常、ヨーグルトなどに含まれる乳酸菌は、食品のなかで生きて活動し、発酵を促しています。自家製ヨーグルトをつくったことのある人ならわかると思いますが、乳酸菌が働くことで発酵が進み、水分が減り、固形に近づいていきます。食べずに放置しておけば、発酵がさらに進み、やがて空気中の雑菌が混ざり、腐敗していきます。

それなら、私たちが乳酸菌を含む食品を食べると、乳酸菌は生きたまま体のなかで活動を続けるのかというと、必ずしもそうではありません。実はほとんどの乳酸菌は体内で死滅してしまいます。体内に入った食べ物は、消化の過程で胃を通ることになりますが、胃酸は大変強力な酸性であり、ほとんどの菌は胃酸によって死滅させられてしまうのです。ですから、胃という難関を通り抜けて、生きたまま腸までたどりつける菌というのは、耐酸性が高い菌でなければなりませんが、酸に強い菌はそれほど多くはないのです。

そこで、各食品メーカーは必死になって、胃酸に負けない強い菌を探しはじめたのです。

ここで、そもそも「乳酸菌」とはどういうものかを説明しておきましょう。

乳酸菌は「糖質から乳酸をつくりだす細菌の総称」です。1種類の菌を指すものではなく、発酵によって糖類から乳酸を産生し、悪臭の原因になるような腐敗物質をつくらないものが一般に乳酸菌と呼ばれています。現在確認されているだけで、約200種類もの乳酸菌が存在し、植物由来のものと動物性のものに大きく分けることができます。

私たちの体内にも乳酸菌は棲みついています。その多くが腸内にいて、「善玉菌」として腸内の環境と整える役割をしています。腸内細菌を大きく分けると、人にとって有益な「善玉菌」、悪い影響を与える「悪玉菌」、善玉菌と悪玉菌のうち、優勢な側になびく「日和見菌」がいるのですが、乳酸菌を代表とする善玉菌は、腸内でビタミンを生成したり、消化管の免疫力を高めたりする働きをしています。

腸内細菌の割合が、乳酸菌をはじめとする善玉菌優位の状態であると、食べたものの栄養はしっかり吸収され、老廃物は尿や便として排泄されます。しかし、体調が悪いとか、ストレスがたまっている、食事のバランスが悪い、生活サイクルが乱れているときには悪玉菌の比率が高くなってしまいがちです。すると、大腸で食べかすが腐敗し、毒素が発生します。

これらの毒素は、腸管を傷つけて下痢や便秘を引き起こします。また、毒素の成分は、血液を通して全身に運ばれてしまうために、さまざまな病気の原因にもなってしまうのです。とくに、便秘がちな女性で、膀胱炎や膣炎になりやすい人は、腸内細菌のバランスが悪い可能性が高いので注意してください。

つまり、腸内に善玉菌が増えれば、腸内環境が整うということになります。

さて、ここで「生きて腸まで届く」が問題になってきます。いくら乳酸菌の含まれた食べ物を口にしても、菌が胃で死滅させられてしまったら意味がない、そう思えますよね? そう考えたからこそ、胃酸に勝つ乳酸菌を各メーカーが必死に探しているのです。

ところが、最近の研究で、乳酸菌が胃酸で死滅させられて腸に届いたとしても、乳酸菌の死骸が腸管に刺激を与えて、生きている菌と同様の作用をすることがわかってきたのです。すべてが解明されたわけではありませんが、現状では、「生きたまま」でなくても、乳酸菌の含まれた食べ物は、腸内環境を整える一助になると考えて良いようです。

ただし、注意して欲しいのは、乳酸菌の含まれたものを大量に食べたからといって、いきなり腸内環境が激変するわけではありません。外部からは取り込んだ乳酸菌がそのまま腸内に棲みつくわけではなく、現在、腸内にいる善玉菌に働きかけて、善玉菌が増えるように働きかけるだけです。ですから、乳酸菌は毎日摂取して、少しずつ腸内環境を整えていく必要があるのです。

また、乳酸菌は種類によって、体に与える影響が違います。各メーカーが研究を重ね、それぞれ効果のある菌を見つけていて、その健康効果は化学的に証明されているものもたくさんあります。数年前にインフルエンザ予防の効果をうたった乳酸菌飲料が発売され、爆発的な人気となりました。

また、2018年の3月には大手食品メーカーが、「ビフィズス菌A1」という乳酸菌に、「軽度認知障害が疑われる人の認知機能を改善する作用がある」ことを確認したと発表しました。今後も、新たな効果をうたう商品が登場してくるはずです。もちろん、薬ではありませんから、誰もが必ず効果を感じられるわけではありません。人によって菌との相性もありますから、いくつか試してみて「便通が良くなった」「肌がきれいになった」など、効果を感じられたら、その商品を続けて摂取していくのが賢い方法でしょう。

以下は、多くの論文から、主な乳酸菌の健康効果がうたわれているものを抜粋したものです。乳酸菌の含まれた商品のパッケージに、乳酸菌の名称が表示されているものも数多くありますから、購入の際の指針にしてもらえればと思います。健康効果については、あくまでも研究の成果であって、その乳酸菌を含む製品を摂取すれば必ず得られるという効果や効能ではありません。また、効果を実感するには、適量を毎日続けて摂取する必要があることはお忘れなく。

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〈腸を整える作用の強い乳酸菌〉

▼ビフィズス菌BB536菌

日本で初めてヨーグルトに使われたビフィズス菌。強い殺菌作用があり、悪玉菌の繁殖を抑える。特定保健用食品の関与成分にもなっており、世界各国に輸出されている。O-157の感染を防ぐ作用がある。

▼乳酸菌LGG株

研究論文や臨床研究が1300以上もある、研究の盛んな乳酸菌。初めて特定保健用食品の関与成分になった乳酸菌として知られている。便通の改善のほか、アトピー性皮膚炎などのアレルギー予防や、皮膚の毛穴改善など美肌効果もある。

▼ビフィズス菌Bifix(GCL2505株)

マウスによる実験で内臓脂肪の蓄積抑制、糖代謝の改善が見られた。生きて腸まで届き、腸でスピーディに増殖することから、他の乳酸菌に比べて整腸効果が早く出る。機能性表示食品の関与成分。

▼ビフィズス菌BE80

酸に強く、腸まで生きて届く。女性と高齢者において、便の腸管通過時間を短縮することがわかっており、便秘解消や腸内にたまったガスの解消に効果がある。

▼LB81乳酸菌

ブルガリア菌2038株とサーモフィラス菌1131株を併せてLB81菌と呼んでいる。トクホの関与成分にもなっている。悪玉菌の数を減らすだけでなく、悪玉菌が出す有害物質の量を減らす効果もある。また、腸管内の「抗菌ペプチド」を増やし、腸管バリアの機能を高めることがわかってきた。

▼クレモリス菌FC株

カスピ海ヨーグルトの中心となっている菌。高い整腸作用による腸内環境と排便状況の改善が認められている。アトピー花粉症などのアレルギー症状の改善、インフルエンザなどのウイルス性疾患の予防、中性脂肪の低減血糖値の上昇抑制による糖尿病の予防なども期待できる。

▼ビフィズス菌BB-12

世界的に使われている乳酸菌。学術論文も多い。生きたまま腸まで届き、腸内環境を整え、腸の蠕動運動を活発化させる。胃のむかつき、免疫力向上、アレルギー症状の緩和なども期待できる。

▼NY1301株

特定保健用食品の関与成分。胃酸や胆汁酸に強く、高い確率で生きたまま腸に届き、腸で増えやすいことが確認されている。善玉菌と合わせて37℃の環境で培養したところ、善玉菌が約20倍に増加した研究結果がある。

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〈免疫力を高める乳酸菌〉

▼R-1乳酸菌

ブルガリア菌の一種。NK細胞(ナチュラルキラー細胞)を活性化させ、免疫力を向上させる。高齢者や小中学生を対象にした実験で、インフルエンザや風邪の感染率の低下が認められている。

▼ラブレ菌

京漬物「すぐき」から発見された植物由来の乳酸菌。小・中学生を対象とした大規模実験で、インフルエンザの感染率の低下が認められている。便通の改善はもちろん、肩こり、腰痛、手足の冷えの改善効果もある。

▼ビフィズス菌SP株(SBT2928株)

大腸に定着し腸内環境改善する。ウイルスに感染した細胞やガン細胞を攻撃するNK細胞の活性化、病原性大腸菌O-157の予防にも効果が期待できる。

▼ST9618株

がん細胞やウイルス感染細胞を見つけ、攻撃をするNK細胞を活性化し、免疫力を高める。風邪症候群の予防と症状の低減が確認されている。

▼シールド乳酸菌

NK細胞を活性化し免疫力を高める。マウスによる実験で、肺でのインフルエンザウイルスの増力が抑制され、症状が軽減された。

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〈がん予防・アンチエイジングに効果のある乳酸菌〉

▼L.カゼイ YIT 9029(乳酸菌Lシロタ株)

特定保健用食品の関与成分にもなっている乳酸菌。大腸がん、乳がん、膀胱がんの予防、腸内環境の改善、NK細胞の活性化に加え、有害物質を菌体に吸着して排泄する効果も期待できる。

▼プラズマ乳酸菌

マウスによる実験で、加齢による毛艶の劣化、筋肉量の減少などが抑制できると判明。また、感染症が起きたときにだけ活性化する「プラズマサイトイド樹状細胞」を、健康な状態でも活性化させる唯一の乳酸菌。風邪、インフルエンザ、ロタウイルスなどの感染を予防する。

▼ビフィズス菌LKM512

酸に強く、空腹時でも胃酸によるダメージを受けず腸に届く。腸内を酸性に傾け、善玉菌を増やす助けをするとともに、大腸がんやアンチエイジングに効果のある「ポリアミン」という物質をつくる。

▼乳酸菌PA-3株

細胞の新陳代謝に使われる体内のプリン体は、過剰摂取すると血清尿酸値の上昇、高尿酸血症や痛風発症リスクになる。乳酸菌PA-3株は、菌が増殖するときにプリン体を取り込むことがわかっており、痛風患者の血清尿酸値を改善することが確認されている。

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〈抗アレルギー効果のある乳酸菌〉

▼リフレクト乳酸菌(T-21)

一日あたり数千億個の菌を摂取することが可能な乳酸菌で、一般的な乳酸菌の半分の期間で効果を実感できる。花粉症やハウスダストなどが原因の通年性鼻炎であれば、3~4週間、花粉症であれば4週間食べ続けるのがおすすめ。

▼L-92乳酸菌

免疫細胞の働きを正しく導き、アレルギー症状の原因となる物質の産出を抑制する。小児アトピー性皮膚炎、成人アトピー性皮膚炎でも、検証実験が行われ、炎症の強さと面積、かゆみに対して有効性を示す結果が出ている。マウスによる実験ではインフルエンザの予防効果も認められている。

▼KW乳酸菌(KW3100株)

免疫細胞のバランスをとり、アレルギー症状を改善する。マウスによる実験では、くしゃみの回数、鼻をひっかく回数が軽減することがわかっている。

▼L-55乳酸菌

生きたまま腸まで届き、腸管上皮細胞での定着率が高い。マウスによる実験で、花粉症やアトピー性皮膚炎の症状が緩和された。

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〈内臓脂肪を減らす乳酸菌〉

▼ガセリ菌SP株

内蔵脂肪を低減する効果がある。マウスによる実験で、インフルエンザ予防と、インフルエンザの症状を軽減することが確認されている。腸管への定着性が非常に高い点も特徴。

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〈ピロリ菌を撃退する乳酸菌〉

▼乳酸菌LG21株

耐酸性が強く、酸性の環境でも成長し、胃の細胞に定着しやすい。ピロリ菌の増殖を阻害し、菌数を1/10に抑制するというデータもある。胃炎や胃潰瘍などの原因が見つからないのに胃もたれや胃の痛みが続く人の症状を軽くする。

▼ビフィズス菌B.ビフィダムY株

胃で働くビフィズス菌。胃の機能を回復、ピロリ菌抑制作用に加え、ストレスを軽減する作用がある。ストレスによって上昇する、唾液中のコルチゾール濃度の低下が確認されている。

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〈ストレスを軽減する乳酸菌〉

▼ガセリ菌C-23株(プレミアガセリ菌CP2305株)

ストレスが原因の腹痛の改善や、ストレスマーカーである唾液中のコルチゾールの分泌が抑制させることが確認されている。睡眠時の脳波調査では、入眠までの時間と、睡眠中の深い眠りの割合が改善することがわかっている。また、自律神経と関わる脳の部位で血流が改善され、副交感神経の活動が増加することも確認されている。

▼L.ガセリ乳酸菌(OLL2809株)

血中コルチコステロンの増加をゆるやかにして、脾臓のNK細胞の活性が低下するのを抑えてストレスを軽減する。また、激しい運動による免疫低下抑制、アレルギー症状軽減、子宮内膜症の進行を抑制する効果もある。

2018-10-26 | 食習慣

血液サラサラ、抗ウイルス対策、デトックス効果、老化予防に効果あり。日本の伝統発酵食「納豆」を食べよう!

昔から、体に良いと言われる「納豆」。日本ならではの食品の代表ともいえる納豆は、大豆を納豆菌で発酵させたものです。以前から体によいとは言われていましたが、近年の発酵ブームを受けて、改めて健康効果が見直されています。和洋中を問わず、さまざまな料理に利用できる点も注目すべき点。毎日食べることで健康が増進されるという研究結果が多数発表されていますから、ぜひ、食べ続けたいものです。今回は、納豆について、少し踏み込んでお話してきます。

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納豆の起源には諸説あり、その中でも最も古いものは、大豆の栽培が始まった弥生時代までさかのぼります。納豆の原料である大豆は、生で食べられないために茹でて食べられていました。その大豆が、床に敷かれたワラの上に落ち、温まって自然発酵したのが最初の納豆ではないかと言われています。納豆について書かれた書物は、平安時代のものが最古ですが、当時の納豆は今、私たちが食べている糸引き納豆とは違い、大豆を麹菌で発酵させたあと、乾燥・熟成させたものだったようです。

今のような糸を引く納豆が庶民の口に入るようになったのは江戸時代ではないかと推測されています。ただ、当時は、ご飯にかけるのではなく、味噌汁に納豆を入れた納豆汁として食べていました。こうして歴史をみていくと、納豆は日本独自のもののように思えますが、中国や東南アジアにも糸を引き、独特の匂いのする納豆は食べられています。とはいえ、納豆だけをそのまま食べるというスタイルは日本だけのようです。他の国では、油で揚げるか、野菜や魚と一緒に炒めて食べるのが一般的です。

納豆ならではのネバネバと匂いは「納豆菌」がつくり出しています。納豆菌は枯草菌(こそうきん)の一種で、土壌や植物の中に存在し、空気中にも常在している菌の一つです。日本産の稲のワラ1本には、約一千万個の納豆菌が「芽胞(がほう)」という形で付着しています。芽胞というのは、菌が休眠しているような状態で、その場所の環境が菌に適していない場合に形成される特殊な細胞構造のことです。温度や湿度が整い、増殖に適した環境になると発芽して菌本来の働きを始めます。この特性から、安定性のある強い菌として知られています。

真空や冷凍、100℃の煮沸でも死滅しませんし、酸やアルカリに対しても耐性を持ちます。人間の致死量の何千倍もの放射能を浴びても生き残れるとか、栄養なしでも100万年生きられるなど、推測に過ぎない意見もありますが、それだけ強い菌というわけです。

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納豆の種類は、使用する大豆の大きさや形状で分類されます。

「大粒納豆」は、粘りが少なめでかみ応えがあります。そのため、ご飯にかけるよりはそのままおかずとして食べられることが多いようです。

「小粒納豆」は、水戸で小粒大豆の生産が増えたことで使われることが多くなりました。粘りが強く、ごはんにかけて食べるのが最もおいしいとされています。

納豆巻きなどにも使われる「ひきわり納豆」は、大豆を砕いてから発酵させます。大豆の皮がないため、発酵スピードが速く、大粒納豆や小粒納豆とは食感も風味も違います。東北地方ではひきわり納豆がよく食べられています。

また、納豆に別の食品を加えた伝統食もあります。

山形県の米沢地方で昔からつくられている「五斗納豆」は、ひき割り納豆に米麹と塩を加え、発酵・熟成させたものです。刻みショウガや七味唐辛子、ニンニクなどを薬味として入れることが多いようです。

茨城県水戸市の郷土料理「しょぼろ納豆」は、納豆に塩漬けした切干大根を刻んで入れ、醤油や調味料で味を調えたものです。「そぼろ納豆」と呼ばれることもあります。酒のつまみやお茶漬けの具として食べられることもあるようです。

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では、いよいよ納豆の健康効果についてお伝えしていきましょう。

原料の大豆は、栄養素のうち35%がたんぱく質。「畑の肉」と呼ばれるほど高い栄養価を誇ります。私たちの体は、筋肉も骨も内臓も、細胞レベルからたんぱく質でつくられています。たんぱく質を構成するのは「アミノ酸」ですが、アミノ酸のうち、体内ではつくることができず、食品から摂取しなければならないものがあります。これらは「必須アミノ酸」と呼ばれ、8種類が確認されています。大豆には必須アミノ酸が豊富に含まれているため、たんぱく質のなかでも非常に良質で、私たちの健康を支える大切な食材と言えるのです。

たとえば、100g当たりのアミノ酸含有量を大豆と豚肉で比較してみると、成長ホルモンに関与する「イソロイシン」は大豆で1800mg、対する豚肉は990mg、筋肉をつくる重要な役割をする「ロイシン」は、大豆で2900㎎、豚肉では1700㎎、うつ病を予防すると言われる「フェニルアラニン」は大豆で3300㎎、豚肉は1500㎎と、いずれも大豆のほうが優れていることがわかります。

体にとってなくてはならい必須アミノ酸をたっぷり含む大豆を「発酵」させたものが納豆です。発酵とは、目に見えない小さな微生物の働きのこと。地球上にはさまざまな場所に微生物が生きており、その微生物が食品の成分を分解したり、合成したりします。こうしてできたものが、一般的に「発酵食」と呼ばれます。

発酵に関わることのできる微生物は、総称して「発酵菌」と呼ばれます。なかでも良く知られているのが、酵母、細菌、カビです。納豆の発酵菌は前述した通り、「納豆菌」と呼ばれるものです。

納豆菌は、温度や湿度が納豆菌にとって心地よい状態であれば、たった一つの菌が15時間後には10憶個に成長すると言われています。それだけのパワーを持つ納豆菌は、多くの酵素をつくり出すことでも知られています。大豆のたんぱく質や糖、脂質を分解し、納豆独特の匂いや、ネバネバを生むのも、納豆菌がつくる酵素の力です。

納豆菌がつくりだす酵素のなかでも、特に注目すべきは「ナットウキナーゼ」という酵素です。この酵素は、血管内にできた血栓のもととなる「フィブリン」というたんぱく質を分解する働きがあることで知られています。食品の中で、血栓を直接溶かす働きがあるのは納豆だけ。血液をサラサラにして血圧を下げ、動脈硬化や心筋梗塞を防ぐ効果が期待できるのです。

また、納豆のネバネバをつくり出している成分は「ポリグルタミン酸」と呼ばれます。この成分もとても優秀で、胃壁を守り、腸管の老廃物を排出する手助けをしてくれます。

納豆の健康効果はまだまだあります。

「イソフラボン」は免疫を上げ、ホルモンバランスの乱れを整え、美肌効果を発揮しますし、「大豆レシチン」は、記憶や判断などの情報伝達物質に変化し、脳機能を高めます。老化による物忘れや学習能力の低下を抑制するとも言われています。

大豆が納豆菌で発酵する際に発生する「ジピコリン酸」は、強い抗菌作用、抗ウイルス作用を持っていて、体の免疫力を高めます。病原性大腸菌O-157への抗菌効果も認められているほどです。

大豆に含まれるアミノ酸の一つ「アルギニン」は、傷ついた肝臓の細胞を修復し機能を回復させる働きがあります。また、納豆菌は腸内で骨を形成するビタミンKをつくり、骨粗鬆症を予防します。

さらに、納豆菌のすごいところは、胃を通るときには、芽胞をつくり休眠状態になり、胃酸に溶かされず生き延びる点です。小腸から大腸に入って、ようやく発芽し、腸の中で善玉菌が増えるのを助けてくれるのです。

こうした健康効果が認められている納豆ですが、多くの種類からどれを選んだらよいのかわからないという声も聞かれます。豆の大きさだけでなく、包装の違い、たれの味など、その種類は驚くほど多彩です。納豆自体の健康作用としては、おそらくどれも大差ないと思います。選ぶ際のポイントとして着目して欲しいのは大豆の種類です。農薬のことを考えると、国産の大豆であることは一つポイントになるでしょう。アメリカ産の大豆は94%が遺伝子組み換えの大豆です。

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次のポイントは包装です。昔ながらのワラに包まれたまま発酵させた納豆は、ワラ独特の香りがして食欲をそそります。同時に、本来の納豆臭さをワラが吸収してくれるので、朝食べるには適しているでしょう。注意点としては、ワラについている菌で二次発酵が進みますから、賞味期限内に必ず食べるようにしてください。

最後はタレですが、梅、ネギ、卵など、各メーカーが工夫したたれを添付して競い合っています。しかし、こちらに関しては健康をより重視するのであれば、使用しないほうが適切かもしれません。添付されているタレは、いわゆる調味液ですから、天然のものではなく、塩分や糖分を余計に摂取することになります。本当に美味しい納豆であれば、醤油を1~2滴かけただけで十分美味しく味わえるはずです。

また、どうせ食べるなら、「納豆」の旨味と栄養をパワーアップさせる食べ方にチャレンジしてみましょう。納豆をかき混ぜるのは何回がよいのか。さまざまな意見が言われていますが、これは好みの問題です。実際試してみると、混ぜれば混ぜるほど滑らかになり、美味しく感じる人が多いかもしれません。

混ぜる前には薬味や調味料はいれないほうが、粘りが出ます。また、薬味をいれる場合は食べる直前にしましょう。薬味から出る水分が、旨味を薄めてしまいます。

卵を混ぜて食べるのも美味しいですが、ここでひとつ注意があります。納豆に卵を入れる場合は黄身の部分だけにしましょう。卵白には「アビシン」というたんぱく質が含まれているのですが、納豆に含まれるビタミンB群の一つ「ビオチン」が結合すると、体に吸収されないまま排泄されてしまいます。ビタミンB群は疲労回復やストレス解消に効果を発揮する大切な栄養素ですから、納豆の栄養価を十分に取り入れるためにも、卵白とは混ぜないほうがよいのです。

また、納豆を食べるのは夕飯がおすすめです。ナットウキナーゼは、血液をサラサラにして血管の病気を予防する大切な働きをしてくれますが、血管が汚れやすいのは寝ている間。その間にナットウキナーゼの成分が体内にあることが大事です。

ナットウキナーゼの効果は食後少ししてから、10~12時間くらい継続すると言われます。心筋梗塞が起こりやすいのは朝4~5時、狭心症が起こりやすいのは朝6~8時ですから、夜8時ごろまでに納豆を食べると、これらの病気の発症リスクを抑えられるのです。

今回お伝えした納豆の健康効果は、実際に論文で発表されている効果効能をまとめたものです。科学的に健康効果が実証されているのですから、食べて損はありません。インフルエンザが流行するこれからの季節、抵抗力を高めるためにも「夕飯に納豆」を続けてみてはいかがでしょう。

2018-08-31 | 陶板浴, 食習慣

減塩・糖質ゼロ・ノンカロリーは体に悪い?うまいネーミングにだまされないで!

飲料や加工食品を選ぶときに、何を基準に選ぶでしょうか?

健康志向の高まりから、「減塩」「糖質ゼロ」「カロリーオフ」など、さまざまな表示が商品ラベルに貼られ、ついつい手が出てしまうことがあります。でも、それって本当に正しいのでしょうか?

世の中には「正しい」とされることが間違っていたり、「良い」とされるものが悪いものだったりというのはよくあることです。とくに健康や食べ物に関しては、噂が先行して何が正しいのか見えなくなることもしばしばです。玉石混淆の情報から、何が真実なのかを見極めるのはとても難しいですよね。

たとえば「糖類ゼロ」「無糖」の表示。

コーヒーや紅茶などの飲料でよく見かけます。まるで糖類を使っていない商品のように思えますが、100㎖あたり0.5g未満の飲料製品には表示が許可されていますし、「微糖」や「低糖」は、100㎖あたり2.5g未満であれば表示できます。

一般的な缶コーヒーは185㎖入りですから、5g近くの砂糖が入っていても「微糖」「低糖」とうたえることになります。ちなみに、角砂糖1個が3~4gですから、1.5個程度の角砂糖が入っていることになります。

「甘さ控えめ」という表現も微妙ですが、こちらは砂糖の含有量を示すものではなく、あくまでも味覚上「それほど甘くない」ことを示しているだけです。

では、「減塩」の表示はどうでしょうか。健康診断の結果を気にして少しでも塩分をカットしようと「減塩」の調味料を積極的に取り入れている人もいると思いますが、ぜひ考え直してもらいたいと思います。

そもそも、醤油や味噌、マヨネーズ、ケチャップ、ソースなどの調味料は、塩分量を調整して、ある程度日持ちのする完成品になっています。塩は防腐剤の役割をするからです。そこから塩分をひいてしまったら、保存のきく調味料として成り立たなくなってしまいます。

そのために、減塩の商品には防腐剤、PH調整剤、着色料などの食品添加物が入れられているのです。食品添加物を悪者扱いするつもりはありませんが、本来、入れる必要のなかった化学物質を添加したものをわざわざ摂取するのは本末転倒です。だとしたら、出汁を使って味を深め、調味料の量を少なめにするとか、料理に調味料をかけてしまうのではなく、小皿に調味料を入れ、少しずつ添付して食べるようにするほうが、健康的に減塩できます。

では「ノンオイル」という表示はどうでしょうか? ドレッシングでよく見かける表示ですが、確かに油類は使わずにつくられていますが、ノンオイルドレッシングの成分表示を見ると、「ブドウ糖」や「果糖ぶどう糖液」などの文字が並び、オイルを使ったドレッシングに比べて3倍もの糖分が含まれているとも言われます。ですから、ダイエットにノンオイルドレッシングはNGです。

「ノンカロリー」「ゼロカロリー」についても検証しましょう。

厚労省の基準では、5キロカロリー未満であれば「カロリーなし」とうたってよいことになっています。ですから、飲料であれば100mlを基準にして考えて、4.9kcalのものは0kcal」と表示できます。

つまり、500ml入りのペットボトルであれば、25kcal未満であれば「ノンカロリー」や「ゼロカロリー」と表示できるのです。

加えて、カロリーゼロ商品には人工甘味料が使われている点にも注目して欲しいと思います。成分表示を見ると、「アスパルテーム」「アセスルファムカリウム」「スクラロース」「ネオテーム」といった人工甘味料の名前が記載されていることが多いのですが、これらには「中毒性」があり、一度口にすると「また食べたい」「もっと飲みたい」という欲求が出ると言われています。同時に、脳からはドーパミンなどの神経伝達物質が分泌され、食欲が増進してしまい、ダイエットに反する「食べたい衝動」が生まれてしまうのです。こうした衝動が続くと、うつ病へ移行する可能性もあると言いますから、人工甘味料を「甘く」みてはいけません。

また、人工甘味料のとりすぎは、体調不良を起こす原因にもなることが、世界各国の研究によってわかっています。ハーバード大学が20年にわたる追跡調査をした報告では、ダイエットソーダを1日2缶以上飲んでいた人は、飲んでいなかった人に比べて、腎機能が30%低下していましたし、コロンビア大学の調査では、ダイエットソーダを毎日飲む人は、飲まない人に比べて、脳卒中や心筋梗塞などを発症するリスクが43%も高かったそうです。

消費者にとっては、つい手を出したくなるような「うまいネーミング」や「宣伝文句」には、裏があるかもしれません。だまされず、賢い消費者になりたいものです。